心の強さ

 看護師の仕事では心の強さが必要です。肉体的な体力もさることながら、心の体力も必要となるのです。どれだけ肉体的な体力に自信があっても、心を病んでしまっては看護師の仕事を続けることはできません。心が健康であってこそ、看護師の仕事が勤まるのです。心が弱ってしまう原因の一番大きなものは、やはり患者さんの死です。それはそれは辛いものがあります。これはどの看護師も経験するもので、どの看護師もその辛い立場から立ち直っているのです。しかしながら、心が削られるのはそれだけではありません。患者さんのご家族からのクレームも心をえぐる要因のひとつとなります。
看護師の仕事は100%患者さんの意向に沿うことではありません。ときには患者さんに負担を強いながらも、患者さんのためになることをさせていかなければなりません。その際に、こちらが提示する方法に納得されない方もいらっしゃいます。そういったときは、患者さんやそのご家族からのクレームに対処しなければならないこともあります。それはときに理不尽なものであるかもしれません。どうしようもないようなことでクレームが入るかもしれません。その際に人間性を傷つけられるような言葉を浴びせかけられることもあるかもしれません。しかし、そこでへこたれるようでは看護師の仕事は勤まりません。どんなときも自分の看護に自信を持って、毅然としていなくてはならないのです。
もちろん、患者さんやご家族のおっしゃっていることに真摯に耳を傾ける姿勢は重要です。独りよがりになってはいけません。いろんな意見を吸収しつつも、それでも必要なことであれば、患者さんやご家族に納得してもらわなくてはなりません。そのためには様々な言葉を尽くさなくてはならないでしょう。そういった努力を全部して、それでもなおかつ毅然とした態度でいることが必要なのです。
どんな場面でも看護師は心を強く持って、他の患者さんに影響がないようにしなくてはなりません。それはなかなか簡単にできるものではありません。むしろかなり難しいでしょう。肉体的な体力が減ったのであれば、眠れば回復するでしょう。しかし、心の面で傷つけば、一晩寝たからといって復活するわけではありません。それでもそのことを他の患者さんに悟られることなく、日常と同じように振舞わなくてはなりません。どんな言葉を浴びせられたとしても、自分自身の信念を強く持って、毅然とした態度で日々振舞わなくてはなりません。そういった意味での心の強さが必要なのです。